「最初に買ったLP盤」

「我が青春に『さだまだし』・・・あり!」
スポンサードリンク




 翌朝は流石に眠かったけど、何とか起きることができました。ファンにとってレコードは大切な宝物です。借りたレコードを早く返そうと学校に持って行くと、「えっ!もう聴いちゃったの? たった一晩で?」 「うん、大切なレコードだから早く返そうと思って。」 「次に貸す相手はいないから、まだ良かったのに。」 「でも・・・良いレコードだよね、聴いてるうちに自分も、自分のが欲しくなっちゃってさあ。」 「えええ~っ、買っちゃうの~?」 と言うことで、毎月の小遣いと正月のお年玉を貯めておいた貯金を降ろして、さっそく次の日曜日に、駅前のレコード店に勢い勇んで買いに行きました。店の中に入ると狭い店内の壁という壁には、ビートルズやカーベンターズ、サイモンとガーファンクルといった外人タレントのポスターが貼り巡らされていて、棚という棚にはレコードがギッシリと詰め込まれていました。一枚一枚引き抜いて探すのがひと苦労。洋楽、邦楽、ジャンル別、グループサウンズ、あいうえお順などの表示はありましたが、決して表示通りに整理整頓されているとは言い難く、果たして自分だけの力で見つける事が出来るのか不安な気持ちになりました。最初から店員さんを捕まえて聞けば早いのは分かっていましたが、何となく聞くのが恥ずかしいというか、自分で見つけ出す醍醐味を味わいたいというか、結局店員さんは頼らず、探すのには少し時間を要しましたが、いざ見つけた時の感動。しかし「グレープ」と言えばファンの大半は若い女性です。自分は男なのでやはり何だか恥ずかしさを感じて、誰が見ている訳でもないのに、周りの目が気になって、ジャケットを手に持ってまじまじと眺めることは出来ませんでした。何も考えずにそのレコードを持ってレジに行けば良いだけなのにそれも出来ず、しばらくもじもじと無駄な時間を費やした後、ようやく腹を決めてレジに向かいました。たかだかレコードをひとつ買うだけで、人目を気にしない勇気と、せっかく貯めたお金を使ってしまう踏ん切りが自分には必要だったのです。 
  レコード店を出た自分は一刻も早く自宅に戻って、自分のものとなったレコードを聴きたくて仕方がありません。「三年坂」を自転車の前のカゴに斜めに差し込んで、一分一秒でも早く家に着けるようにと、ペダルを踏む足にも力が入ります。でもあまりに急ぎ過ぎて、もし自転車ごと転倒してレコードが割れてしまったら・・・なんてことまで想像してしまい、片手でレコードを押さえながら、ほとんど片手運転で家に帰りました。

タイトルとURLをコピーしました