「友達が貸してくれたLPの二枚組」

「我が青春に『さだまだし』・・・あり!」
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 そんな折り、放課後の教室でクラスメイトが、「友達に貸してたレコードがようやく帰って来たよ。」と、半分見せびらかすように、大きな手提げ袋を持ち上げて見せたのです。「何のレコード?」と聞くと「グレープだけど、聴く? 貸してやろうか?」・・・
  「グレープ」はさだまさしさんと吉田正美さんが1972年11月3日に結成したフォークデュオです。「追伸」と「ひとり占い」は完璧に歌う自信がありましたが、この時点でも、まだ自分は「グレープ」に対して特別な思いは抱いておらず、あえてレコードを借りたいとも思わなかったのですが、「遠慮しないで持ってきなよ、すぐ返さなくてもいいからさあ・・・」と、さっきは大切なレコードがようやく帰って来たと喜んでいたはずなのに、今度は、「貸りてけよ~もっていけよ~」という何だかものすごく強引な押し売り的なオーラが友達の全身から伝わってきたので、思わず「うん、借りるよ。」と答えてしまいました。とどの詰まりは、それがどんなレコードだかも知らずに持ち帰ってしまったのです。家に着いて袋から取り出して見ると、ジャケットの表には「三年坂」と書かれていました。中を覗くと、なんとLP盤が2枚も入っていたのです。正直なところ借りなければ良かったと後悔しました。LP盤が二枚ということは、全部聞くのにかなり時間が掛かります。しかし借りてしまった以上一度は聴かなきゃ悪いし、とにかくなるべく早く返したいという思いから、その晩とりあえず一枚だけ、寝るのを我慢して聴くことにしました。もちろんヘッドフォンをつけて。「三年坂」はグレープのリサイタルが収録されている、いわゆるライブ盤てす。他にどんな歌を歌っているのかまあ聞いてみるか。・・・そんな気持ちで仕方なく眠い目を擦りながら聞き始めたのですが、オーブニングがいきなり「精霊流し」で始まった時は、「あっ!この歌聞いたことある。へ~、この人たちの歌だったんだ」・・・その時の自分はこんな程度だったんです。しかし演奏を聴いていくと、中二の自分でも心に共感を覚える歌が多く、また、さだまさしさんの巧みなおしゃべりは人を飽きさせません。そして観客席とのやりとりで生まれる独特な雰囲気に、いつしか自分も呑み込まれていました。アっという間に一枚目のレコードが終わり、プレーヤーの上でレコードが空回りを始めます。夜も遅くこのまま寝ることも考えたのですが、どうしても続きが聴きたくなって、結局2枚目も最後まで聴いてしまいました。聴き終わった時はまさに真夜中でしたが、そのコンサートのあとの余韻でしばらく眠れなかったことを覚えています。

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