子供たちがランと海で遊んでいる間にカミさんはお昼の準備に入ります。自分は車から釣竿を取り出して、皆から少し離れた岩場で釣りの準備を始めました。釣りのエサは途中の釣具店で買ったイソメとイクラです。まずは釣り針にイソメをつけて海へ投げ入れました。幾度か引き上げましたが、すぐにエサは無くなってしまいます。ふと見ると、いつの間にか子供たちは海から上がっていました。虫取網とバケツを手に、すぐ近くまで来ていて、岩場で何やら捕まえようとしています。子供たちに気をとられていたら、竿がブル~ンとしなったので慌てて引き上げましたが、今度もエサは無くなっていました。次はイクラでチャレンジしてみようかと、針にイクラを付けていざ投げようとしたら、子供たちがランと一緒に駆け寄ってきて、大きなカニがいるから捕って欲しいというのです。仕方なく竿を岩の上に寝かせたまま行ってみると、岩陰に大きなハサミが隠れているのが見えました。虫取り網のお尻の部分で幾度か突っついてみましたが、余計奥に入ってしまいます。おびきだす為に何かエサになる物はないかと、釣りのエサとして買ったイクラが頭に浮かんだその時でした。これまで聞いたことの無いような犬の悲痛な叫びが聞こえて来たのです。悲鳴の主はランでした。皆で駆け寄るとランの口の中から釣糸が垂れ下がっているのが見えました。ランの食い意地の悪さを思えば、イクラを見たら食べてしまうのは当然です。「しまった!」と心の中で何度も後悔しました。口をこじ開けてみると釣り針がランの下顎の歯茎を貫通しています。針の返しが完全に突き抜けていて、自分の手ではどうすることも出来ません。それを見たカミさんは気絶寸前、今にも泣き崩れそうでした。エサにイクラを選んだ自分が散々責められました。もはや釣りどころではありません。携帯電話で休日開業している動物病院を探しましたが、西伊豆には一軒も見つからず、それでもなんとか東伊豆に一軒だけ見つけた時は、暗闇の中で遠くに灯る一点の光・・・っていう感じ。電話をかけると「すぐに来なさい」と言ってくれたので、お昼の準備は当然中止となり、全てを車に押し込んで皆で伊豆の反対側へ向かいました。山を越えて一時間ほどで病院に到着。針を外してもらうのにはそんなに時間は掛かりませんでした。病院を出たあとは、来た山道を戻って再び西伊豆へ。空腹感はとっくに通り過ぎていて、時間もかなり費やしてしまったので、お昼を食べる筈だった浜辺を横目で見ながらそのまま、西伊豆こうオートキャンプ場へ向かうことになりました。
コメント