「イチコの飛び出した腸が戻らない!」

ジャックラッセルテリアと大腸がん
 2019年4月の17日、仕事から帰宅してリビングに入ると、リビングの床の上は血だらけでした。この春大学2年生になった息子が、震えたイチコをじっと抱いたまま、ソファーの上に座っていました。腸が飛び出して出血の止まらないイチコを膝の上から降ろすことが出来ず、息子は為す術もなく、かなりの長い時間ソファーに座っていたようです。この日はカミさんは遅番、高三の娘はバイトで、息子はたった一人で身動き取れず家族の帰りを待っていたのです。

 

 自分が帰宅したあと直ぐにカミさんも帰って来ました。イチコのお尻を覗き込むと、真っ赤な血に染まった腸が3〜4センチほど飛び出していました。ここまで飛び出した腸を見たのは初めてでした。カミさんは、任せて置けと言わんばかりに、直ぐにイチコの腸を押し戻すことにトライ。しかし4センチも出てしまった腸は中々戻りません。バトンタッチして自分もトライしましたがやはり簡単には入りませんでした。
  飛び出した部分をただ押し込もうとしても入らないのです。どうしたら入ってくれるのか、試行錯誤しながら、人差し指、中指、薬指の三本を使って、肛門の中心を探りながら、飛び出した部分を包み込むように、ゆっくりと指を押し当てると、奇跡は起こりました。時間は掛かりましたが、少しずつ少しずつ入って行ってくれたのです。
  腸が入れば取り敢えずはひと安心。お尻の周りはイチコの血で真っ赤だったので、良く拭き取ってからオムツを履かせて、ようやくイチコは自由となりました。しかし、安心したのは束の間でした。腸の中で大きく膨らんだ癌をウンチと勘違いしてしまうのか、イチコは直ぐに力む格好を取ってしまいます。オムツの脇から覗くともう既に腸が飛び出していました。

 

  もう一度手袋をはめて腸を押し込むことにトライ。先ほどよりは時間は1.5倍掛かりましたが何とか入りました。しかし直ぐにまた力んでしまい、また腸は出てしまいました。ここまで来たらもう成す術がありません。時計は夜の9時を回っていましたがダメ元で動物病院に電話。流れてくる留守番電話の声に、取り敢えず名前とイチコの状態を吹き込み電話を切りました。

 考えてみれば今日は水曜日で病院は休診日でした。イチコの震えは止まらず、今晩一晩どう過ごしたら良いのか。自分とカミさんと息子の三人で、寝ずの覚悟で準備をしていると突然電話が鳴りました。電話の主は病院の院長からで、「10時に準備をして待っています。」という正しく天からの救いの声でした。娘はまだ帰宅せず、イチコをバスタオルに包んで家族3人家を出ました。

  病院に着くとイチコは直ぐに診察台に乗せられ、院長が、飛び出した腸を元に押し込んでくれました。その後鎮静剤を打ってくれて、シャワーを掛けて、イチコのお尻の周りをきれいにしてくれました。ホッとした瞬間でした。

 

  「鎮静剤の効果は約8時間。その後どうなるか分かりません。明日の朝にはまた腸が飛び出してしまう可能性があります。もし出てしまった場合、出たら押し込むという作業を今後も繰り返して行くのか、もしくは痛みで震えの止まらないイチコちゃんを楽にしてあげるべきなのか?イチコちゃんの家族として、よく考えて下さいね。」

 先生の言葉は重く伸し掛かりました。 カミさんは無言のままバスタオルでイチコを包むとそっと抱き上げました。そして我々3人はほとんど無言のまま帰宅しました。

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